１、ストン　(H18.7.1)


　1ヶ月ほど前になるだろうか。信号待ちの交差点で、前にいた単車のギアが
ニュートラからローに入るときのストンという音が、後ろの車でクラッチを
踏んでいるボクの左足に響いた。長らく忘れていたあの感覚が左足に蘇える。
　「あ・・」
　思わず声が出た。

　ボクが最後に単車に乗ってから、いったい何年経っただろう・・。
今、ボクの単車は倉庫の片隅で車検切れのまま眠っている。
　結婚し、子供が生まれ、父が亡くなり家業を継いだ。色々なことがあって
気がつくと単車に乗ることが無くなっていた。

　「ライダーを止めた訳ではない。いつかまた乗ってやるんだ。」
　などと思っているのだが、はたして何時になるのか・・・。

　あのストンの日からボクの左足は時々、あの感覚を求めてうずく。

　

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